埼玉つげ櫛店 仲間幸雄さんの職人技

【つげ櫛の利点】
●静電気が起きにくい
特に冬場はプラスチックの櫛やブラシを使うとパチパチと静電気が起こり、
髪がまとまらず、その上痛んでしまいます。
痛んだ髪はさらに静電気が起きやすいので、悪循環になります。
つげ櫛は木で出来ていますので、静電気が非常に起きにくいです。
そのため、つげ櫛を使うと髪が痛みにくく、まとまりやすくなります。

●髪がまっすぐ、綺麗に保てる
静電気が起きにくい事に加え、手入れに使う椿油の効果で髪が綺麗になります。
椿油は頭皮にもよく、櫛自体にもマッサージ効果がありますので、頭皮の状態が良くなります。
髪や頭皮のダメージによってくせ毛が発生している場合があるらしく、
つげ櫛を使っているうちに、くせ毛が改善される事もあるそうです。

●非常に折れにくく長持ち
つげの木は非常に固く丈夫で、適度な弾力もあるため櫛の歯が欠けたり折れたりしにくく、
特に国産の薩摩つげ材で作られた櫛は、きちんと手入れをすれば一生使えます。
昔は親子で三代に亘って一つの櫛を使い続けるような事も珍しくなかったそうです。
シャムつげ材でも、丁寧に扱えばかなり長く使えます。

●健康への良い影響が期待できる
頭痛持ちの方の症状が改善されたケースもあるそうです。
木曽のお六櫛の伝説に同様の話がありますので、
頭痛の原因にもよると思いますが、人によっては効果が期待できるかも知れません。

●実は縁起のいい物
櫛は「苦死」に通じるとして、縁起が悪いと言う人がいますが、
江戸時代以降に当て字され、こじつけられた説です。
古事記においては、伊邪那岐命が櫛を退魔の道具として用いており、
万葉集では、長年使い続けたつげ櫛を、男女の変わらぬ愛情の例えとして歌に詠まれています。
「朝月の 日向黄楊櫛 古りぬれど 何しか君が 見れど飽かざらむ 」万葉集 第11巻-2500
魔除けのお守りとしても、大切な人への贈り物としても最適なものです。
ただし、折れたり欠けたりした櫛は非常に縁起が悪いので、注意して下さい。

【つげ櫛の扱い方】
●基本的なお手入れ
できれば使う度に、あるいは1週間に1回程度、椿油を含ませた布で表面を拭きます。
そうする事で椿油が櫛に染み込んで、髪や頭皮に行き渡ります。
また、櫛の汚れや乾燥を防ぎ、櫛の変形を防止する効果もあります。
歯の間は汚れが溜まりやすいので、定期的に掃除します。
歯の間に糸を通して掃除するか、柔らかく細い毛の歯ブラシに椿油を含ませて掃除をすると楽です。
あまり固い毛の歯ブラシを使うと、櫛の歯を傷める恐れがありますので、ご注意下さい。

●水濡れ厳禁!
つげ櫛を使う上で一番気を付けなければならないのは 水に濡らしてはいけない という点です。
濡れた髪を梳いたり、水やお湯で洗っては絶対にいけません。
水分を含んで歯が曲がってしまい、使えなくなってしまいます。
ヘアスプレーや寝ぐせ直しなどの整髪料も避けて下さい。
少し水飛沫が掛かった程度なら、櫛に染み込ませた椿油が多少弾きますので、
すぐに拭き取れば大丈夫なのですが、水が掛かった部分に艶がなくなってしまいます。

●汚れを落とす方法
では、汚れた場合にどうするのか?と言うと、椿油で汚れを落とします。
表面の汚れは、椿油を含ませた布で拭き取れば大抵は落とせます。
なかなか落ちない汚れは、椿油に数時間浸けてから歯ブラシで擦ります。
この方法でも落ちない汚れは、仮に洗剤で洗っても落ちない汚れですので、諦めましょう。
普通に使っていれば、落ちないような汚れはそうそう付かないと思うのですが、
落ちやすいヘアカラーをお使いの方は、色が付かないように注意して下さい。

●椿油の入手方法
櫛の手入れだけなら、ドラッグストアなどで売っている椿油で大丈夫です。
ただ、そういった椿油は大量生産のためかあまり質が良くないようで、
髪に使うとべたつくので、個人的にはあまりお勧めしません。
上質の食用に使えるような椿油なら、髪だけでなく肌の手入れにも使えますので、お勧めです。
廣島さんの所でお使いの椿油は、確か大島の高田製油所さんの物だと伺いました。
筆者は五島の今村製油所さんの椿油を使用しています。
他にもいくつかの製油所で上質の椿油が生産されていまして、それぞれ使い心地が違います。
ご興味がおありの方は、色々試してみられるとよいと思います。

薩摩つげ櫛に限らず、シャムつげ櫛やミネバリ櫛など、
木製の櫛なら全て上記と同様の扱い方で大丈夫です。

【つげ櫛を使うのに向かない方】
●パーマを当てている方
特に、細歯のつげ櫛は「髪をまっすぐに保つ」事を目的としていますので、
パーマを当てて髪をふんわりとさせ、ウェーブを保ちたい方にはお勧めできません。
あまり見かけませんが、歯の間隔が1cmに1~2本程度の荒歯のつげ櫛もありますので、
そういった櫛であれば、パーマを当てた髪にもお使い頂けるだろうと思います。

●どうしても櫛を水で洗いたい方
先述の通り、つげ櫛には「水濡れ厳禁」という特徴があります。
水洗いはできませんので、椿油で汚れを落とすのですが、
それでは綺麗になった気がしない!という方には、残念ながらお勧めしません。
もちろん、消毒用アルコールも使用不可です。

●ドライヤーや整髪料でのブロー・セット用、散髪用に使いたい方
ドライヤーの熱やムース・スプレーなどの整髪料に含まれる水分で櫛が変形する恐れがあります。
濡らした髪を梳かすのも良くないので、散髪用にも使えません。